2013年03月

Linkage

ケガレ (講談社学術文庫)ケガレ (講談社学術文庫)
(2009/07/13)
波平 恵美子

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第1章 「ケガレ」観念をめぐる論議とその重要性(民間信仰におけるケガレの観念の重要性
松平斉光におけるケガレ論
柳田国男におけるケガレ論
最近のケガレ論―桜井・薗田・宮田におけるケガレ論
岡田重精のイミの研究
波平のケガレ論)
第2章 民間信仰におけるケガレ観念の諸相―黒不浄・赤不浄・その他(死に係わるケガレ―黒不浄
出産・月経とケガレ―赤不浄
罪とケガレ・病とケガレ・その他
火とケガレ)
第3章 空間と時間とにおけるハレ・ケ・ケガレの観念(空間の認識におけるハレ・ケ・ケガレ
時間の認識におけるハレ・ケ・ケガレと年中行事再考)
第4章 「災因論」としてのケガレ観念と儀礼(災いの原因の説明としてのケガレ
「災因論」としてのケガレ観念の多様性
メアリー・ダグラスにおける不浄と危険の理論)

 



 昨年末から年初にかけて、メアリ・ダグラス『汚穢と禁忌』 Purity and Danger: を読み、 いろいろと考えを巡らせておりました。内容はかなり面白いのですが、どうもスッキリしない。 スッキリしない理由は何か? 自問自答。

 日本の「穢れ・ケガレ」観念とは異なる概念が含まれているからなのか。
もちろん、『汚穢と禁忌』のなかにも、日本の文化に近い「穢れ・ケガレ」観念は描かれてはいます。しかし、いま一つスッキリしない。それが何故なのかも、 よくわからない。 ひょっとすると、pollutionを「ケガレ」と同一視してしまうところに違和感を感じてしまうのか。 確かに、日本の「ケガレ」観はもっと複雑で多義的であるはずだ。
 
 そのような曖昧な感覚をスッキリさせてくれた書籍、波平恵美子 「ケガレ」

 本書にたどり着くまでの書籍選択には紆余曲折がありました。

 先月、西洋の「ケガレ」観と日本の「ケガレ」観を比較できる関連書籍を渉猟しようと探索開始。
メアリ・ダグラスつながりで海外の著作に当るのも限界がある。そんな考え(手前勝手な解釈)を踏まえて、「ケガレ」をキーワードに、(あまり時代を遡らず) 比較的新しい書籍をあたりました。
 
 それで、以前から気になっていた波平恵美子「ケガレ」を入手。
実際、本書は、「ケガレ」を中心に多岐にわたる副次的題材を綿密に調べた良書でした。



 本書のなかでとりあげられている事例には、本当に日本の習俗かと疑いたくなるようなものもあります。また、おそらく、今日においては廃れてしまっているであろう儀礼(特に葬儀)もこと細かく書かれており、 民俗学が失われた風習・文化を調査する 学問でもあるということを再認識しました。
 
 そのなかでも、特筆すべき点は、というよりも、自分にとって印象が強かったのは、


第3章 空間と時間とにおけるハレ・ケ・ケガレの観念 

でした。

 この第3章の中でも、日本の空間(境界)に対する「ケガレ」観の説明は圧巻でした。

 神聖である 「境界」、すなわち、(両義的意味を含む)空間的「ケガレ」は、本書でいうところの「辻、峠、坂、境」などのことで、なぜ、「山守」「川守」「境守」という職能民が存在し賤視されたのかという謎も明確にしてくれました。先述の『汚穢と禁忌』で説明されている不安定な社会的属性という意味での「境界」とは異なり、空間的な「境界」の説明である。この部分の論述はたいへん興味深い。
 一般的には、どちらかというと、「境界」 と「ケガレ」を題材とする書籍には、空間的なものよりも、ターナーのリミナリティ:liminalityに近い概念の記述が多いように思う。 メアリ・ダグラスの「境界」に関する論述もその系統に入る。その点この空間と時間認識における「ケガレ」は日本独特なものなのかもしれません。
 また、本章で、網野善彦氏、塩見氏の 著述にリンクする感覚を味わえたのは、本書の副産物ともいえそうです。

 他にも、職業としての日常的な「ケガレ」 (農業以外の職能民)が賤視につながる構造も明確にしようとされている論考もあり、聖別が賤視に逆転する構造も納得の説明である。このあたりの説明は、海外の学者の分析よりも日本人の分析による説明 の方が繊細で違和感を感じない。

  また、この波平女史は、メアリ・ダグラスに同調的な立場も示しています。本書巻末には、メアリ・ダグラス『汚穢と禁忌』から、日本の「ケガレ」観 に近い各国共通ともいえる普遍的な概念を取り上げてまとめていました。 


最後に、
 興味深い内容のひとつに、
日本独特の古代信仰「primitiveなカミ」と「異文化的存在の仏教」との拮抗する様子も描かれており、 仏教が死を忌む論理を持たないがための摩擦といえそうである。 語弊を恐れずにいえば、仏教の方が合理的であるとも考えられそうである。 




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